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第三話十章 渡り鳥
この物語に不要な文章はない。
以下は、「鳥捕り」と「鍵をもった人」とのなにげない会話で、読みすごしてしまうところなのであるが・・・。


八、鳥を捕る人

「いゝえ、どういたしまして。どうです、今年の渡り鳥の景気は。」
「いや、すてきなもんですよ。一昨日の第二限ころなんか、なぜ燈台の灯を、規則以外に間〔一字分空白〕させるかって、あっちからもこっちからも、電話で故障が来ましたが、なあに、こっちがやるんぢゃなくて、渡り鳥どもが、まっ黒にかたまって、あかしの前を通るのですから仕方ありませんや。わたしぁ、べらぼうめ、そんな苦情は、おれのとこへ持って来たって仕方がねえや、ばさばさのマントを着て脚と口との途方もなく細い大将へやれって、斯う云ってやりましたがね、はっは。」
すすきがなくなったために、向ふの野原から、ぱっとあかりが射して来ました。

「銀河鉄道の夜」より



これは、タイタニック号の沈没を彷彿させる物語の青年と姉弟が汽車に乗り込んでくる直前の会話である。
タイタニック号が沈んだのは、北大西洋のニューファウンドランド沖であるから、通常は、日付変更線を東に超えた海域での事象ということになる。
つまり、日付変更線により、日本より一日後の出来事なのであるが、日付変更線という人間が勝手に決めた事柄を取り払い、日本を中心に示してみると、以下のようになる。

日付変更線イラスト

ジョバンニは、天気輪の輪からワープしたので、日本を中心として示してみたのであるが、地球は反時計回りに自転している。
つまり、銀河鉄道に登場する南半球と同様、視点を変えれば、自分たちがいる時間軸より12時間前に発生した事柄だったのである。
鳥捕りが「一昨日の第二限ころ」と表現し、唐突敵に飛来した渡り鳥たちは、このタイタニックの乗客たちであったということになる。


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次回に続きます。

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