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第一話八章 銀河ステーション

軽便鉄道の席で向かい合い、地図を見つめあう二人。
生と死の対面である。
カンパネルラも、まだ、入眠幻覚状態のままであり、自分の運命に気づいていない。。。


六、銀河ステーション

「もうじき白鳥の停車場だから。ぼく、白鳥を見るなら、ほんとうにすきだ。川の遠くを飛んでいたって、ぼくはきっと見える。」そして、カムパネルラは、円い板のようになった地図を、しきりにぐるぐるまわして見ていました。まったくその中に、白くあらわされた天の川の左の岸に沿って一条の鉄道線路が、南へ南へとたどって行くのでした。そしてその地図の立派なことは、夜のようにまっ黒な盤の上に、一一の停車場や三角標、泉水や森が、青や橙や緑や、うつくしい光でちりばめられてありました。ジョバンニはなんだかその地図をどこかで見たようにおもいました。
「この地図はどこで買ったの。黒曜石でできてるねえ。」
ジョバンニが云いました。
「銀河ステーションで、もらったんだ。君もらわなかったの。」
「ああ、ぼく銀河ステーションを通ったろうか。いまぼくたちの居るとこ、ここだろう。」
ジョバンニは、白鳥と書いてある停車場のしるしの、すぐ北を指しました。

「銀河鉄道の夜」より






このイラストは「銀の鏡」のInabaさまより掲載許可をいただいたものです。
提供元であるInabさまには、この場をお借りして、厚く御礼申し上げます。
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天気輪の丘から四次空間へと旅立ったジョバンニが、カンパネルラと出会う。
我々読者は、この前の会話で、すでにジョバンニがこの世の人でないことを示唆されている。

一〜五までは、この銀河鉄道の中での出来事の序章に過ぎない。
ここから、本当の物語が始まるのであるが、二人はすでに行程表を手にしており、北から始まり、南へ向かっていくのだという。

では、銀河鉄道の始発駅はいったいどこなのであろうか。


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