「双子座」を眺めた直後、「川の向う岸が俄かに赤くなりました。」と「蠍座」のアンタレスが目の前に出現する。
そして、このアンタレスの前もあっという間に過ぎ、次に出現するのが「ケンタウルス座」である。 「ケンタウル祭」という名前は、この物語の冒頭から登場する。
そして、最終地である「南十字座」にたどりつく寸前、この祭りの本拠地であろう「ケンタウル座」へと到着するのである。
賢治氏は、この「ケンタウルス」という言葉にどのような意味を持たせていたのであろうか。
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九.ジョバンニの切符 その火がだんだんうしろの方になるにつれてみんなは何とも云えずにぎやかなさまざまの楽の音や草花の匂のようなもの口笛や人々のざわざわ云う声やらを聞きました。それはもうじきちかくに町か何かがあってそこにお祭でもあるというような気がするのでした。
「ケンタウル露をふらせ。」いきなりいままで睡っていたジョバンニのとなりの男の子が向うの窓を見ながら叫んでいました。
ああそこにはクリスマストリイのようにまっ青な唐檜かもみの木がたってその中にはたくさんのたくさんの豆電燈がまるで千の蛍でも集ったようについていました。
「ああ、そうだ、今夜ケンタウル祭だねえ。」
「ああ、ここはケンタウルの村だよ。」カムパネルラがすぐ云いました。
-----[以下原稿?枚無し]-----
「ボール投げなら僕決してはずさない。」
「銀河鉄道の夜」より |
「双子座」を眺めた直後、「川の向う岸が俄かに赤くなりました。」と「蠍座」のアンタレスが目の前に出現する。
そして、このアンタレスの前もあっという間に過ぎ、次に出現するのが「ケンタウルス座」である。
最終地である「南十字座」にたどりつく寸前、この祭りの本拠地であろう「ケンタウル座」へと到着するのである。
賢治氏は、この「ケンタウルス」にどのような意味を持たせていたのであろうか。
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ケンタウルス
ケンタウルスは、上半身が人間、下半身が馬である半人半馬族のことで、ギリシア神話では、カテッサリア地方に住んでいたと言われており、射手座の賢者ケイロンもケンタウロス族の一人である。
ケンタウルス族の起源にはいくつかの説があるが、テッサリアの王であった粗暴なイクシオンとヘラの幻(雲)との間に生まれたと言われている。
ケンタウルス族のフォローがヘラクレスと酒宴の最中に他のケンタウルス族に襲われ、ヘラクレスはヒドラの毒を塗った矢で、これを皆殺しにしてしまう。
その仲間を埋葬していた(あるいは、ケンタウルス族が逃げ出した後)フォローは、毒矢を拾い上げた際、誤って毒に触れてしまい死んでしまう。
これを哀れに思ったゼウスはフォローを天に上げ星座にした。
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「ヤグルマギク」(矢車菊)の学名であるCentaurea cyanusは、ケンタウルスに因んで命名されているが、「四、ケンタウル祭の夜」では、ケンタウルス祭の雰囲気として、
「そのまん中に円い黒い星座早見が青いアスパラガスの葉で飾ってありました。」
「九、ジョバンニの切符」では
「あゝそこにはクリスマストリイのやうにまっ青な唐檜かもみの木がたってその中にはたくさんのたくさんの豆電燈がまるで千の蛍でも集ったやうについていました。」
と表現している。
以上のことから推測すると、今まで登場してきた星座のように、「ケンタウルス座」に宗教的背景がみられないことや、他の意味合いを持たせているとは考えにくく、最終地へと到着する手前の通過点とも捉えられるのであるが、物語の冒頭から登場しているのである。
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