ページトップへのバック用アイコンTOP > 箱庭の賢治氏
第二話十四章 時計屋
坂の下でザリネとすれ違ったジョバンニは、綺麗に飾られた街を通って、時計屋の前にたどり着くことになる。

四、ケンタウル祭

ジョバンニは、せわしくいろいろのことを考えながら、さまざまの灯や木の枝で、すっかりきれいに飾られた街を通って行きました。時計屋の店には明るくネオン燈がついて、一秒ごとに石でこさえたふくろうの赤い眼が、くるっくるっとうごいたり、いろいろな宝石が海のような色をした厚い硝子の盤に載って星のようにゆっくり循ったり、また向う側から、銅の人馬がゆっくりこっちへまわって来たりするのでした。そのまん中に円い黒い星座早見が青いアスパラガスの葉で飾ってありました。

「銀河鉄道の夜」より



賢治氏の時代、時計といえば懐中時計のことであり、これは、当時の一般人の月給2〜3か月分にも相当するような高額なものであった。
今のように、時計を扱っている店が、街中に数多くあった訳ではない。
そこで、可能な限りの資料を基に、当時盛岡市内に時計店があったのかを調べてみたところ、2店舗あることが分かったのである。


時計店1時計店2
時計店3時計店4


玉置時計店 宮時計店
明治7〜8年頃に創業し、盛岡市清水町1−35に現存している。 大正中頃に創業し、盛岡市中ノ橋通1−5にかつて存在した。
(場所については、鍵屋の隣にあったとの資料により場所を確定。)


時計店は盛岡駅前の街中にあるものと推測していただけに、中津川をはさんだ反対側の肴町通りに位置していたという事実は意外であった。
当初は、街中ということで、メイン通り沿いに探してみたのだが、該当した「白崎時計店」(2006年に閉店)は、残念ながら、その創業昭和10年のため、賢治氏の死去後ということになり、この物語の舞台となった時計店ではないようである。


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