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第二話二十九章 「牛乳屋」

さっき来た町かどを、まがらうとしましたら、向うの雑貨店の前で、黒い影やぼんやり白いシャツが入り乱れて、六七人の生徒らが、口笛を吹いたり笑ったりして、 めいめい 烏瓜の燈火を持ってやって来るのを見ました。(最初稿)

十字になった町のかどを、まがろうとしましたら、向うの橋へ行く方の雑貨店の前で、黒い影やぼんやり白いシャツが入り乱れて、六七人の生徒らが、口笛を吹いたり笑ったりして、めいめい烏瓜の燈火を持ってやって来るのを見ました。(最終稿)

「銀河鉄道の夜」より



これは、牛乳屋を後にしたジョバンニの様子である。

最初稿での「さっき来た町かど」が最終稿では「十字になった町のかど」へ、「向うの雑貨店の前」が「向うの橋へ行く方の雑貨店」へと変えられている。
さらに、この後、最初稿では「高く口笛を吹いて行ってしまったのでした。」であったものが、最終稿では「高く口笛を吹いて向うにぼんやり橋の方へ歩いて行ってしまったのでした。」と変化している。

つまりは、最初稿と最終稿では、どちらにも登場する同じ情景の「牛乳屋」は、まったく違う場所だということが、この原稿の違いから読み取れるのである。
更に、最初稿では「さっき来た町かど」となっているため、ジョバンニは、牛乳屋の行きと帰りで、同じ道を通っているということになる。


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