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第二話三十一章 ジョバンニの道筋
牛乳屋を後にしたジョバンニは、十字路でザリネ達と出会い、そのまま、丘へと向かうことになる。

四、ケンタウル祭の夜

ジョバンニは、いつか町はずれのポプラの木が幾本も幾本も、高く星ぞらに浮んでいるところに来ていました。その牛乳屋の黒い門を入り、牛の匂のするうすくらい台所の前に立って、ジョバンニは帽子をぬいで「今晩は、」と云いましたら、家の中はしぃんとして誰も居たようではありませんでした。

(中略)

「そうですか。ではありがとう。」ジョバンニは、お辞儀をして台所から出ました。
十字になった町のかどを、まがろうとしましたら、向うの橋へ行く方の雑貨店の前で、黒い影やぼんやり白いシャツが入り乱れて、六七人の生徒らが、口笛を吹いたり笑ったりして、めいめい烏瓜の燈火を持ってやって来るのを見ました。その笑い声も口笛も、みんな聞きおぼえのあるものでした。ジョバンニの同級の子供らだったのです。
ませんでした。

(中略)

町かどを曲るとき、ふりかえって見ましたら、ザネリがやはりふりかえって見ていました。そしてカムパネルラもまた、高く口笛を吹いて向うにぼんやり橋の方へ歩いて行ってしまったのでした。

「銀河鉄道の夜」(最終稿)より



以下の図は、「盛岡市街府瞰図絵」にその時のジョバンニの軌跡を示してみたものである。


ジョバンニの軌跡1
ジョバンニの軌跡1
ジョバンニの軌跡2
ジョバンニの軌跡2
#1 #2

残念ながら、ポプラが立ち並んでいたであろう場所が二ヶ所あると推定されるため、家畜病院への入口につながる「黒い門」がどちらにあるのかが断定できないので、両方を地図に示してみたのだが、いずれも、ジョバンニとザリネ達の軌跡が、ものの見事に当時の地図と一致したのである。


ザリネニの軌跡

(ザリネの軌跡)

ザリネは、最初にジョバンニが自宅を出た直後に、小道から現れている。
このことから、ジョバンニとザリネの自宅は、近いということが推測でき、自宅方面から、2回目の接点へと向かう道筋と、この遭遇の後、「橋の方へ歩いて行ってしまった」という道筋も一致する。
そして、ここでもジョバンニは嫌な思いをすることから、そのままザリネ達の後を追うということは考えにくく、ザリネ達とは反対方向へと進んでいくことにより、更に、具体性が出てきている。

以上のことから、丘に向かうジョバンニが目にした牧場は、競馬場であろうという結論に達するのである。


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