そのまっ黒な、松や楢の林を越えると、俄かにがらんと空がひらけて、天の川がしらしらと南から北へ亘っているのが見え、また頂の、天気輪の柱も見わけられたのでした。つりがねそうか野ぎくかの花が、そこらいちめんに、夢の中からでも薫りだしたというように咲き、鳥が一疋、丘の上を鳴き続けながら通って行きました。
(「五、天気輪の柱」より:丘に向かうジョバンニ)
(中略)
ジョバンニは一さんに丘を走って下りました。まだ夕ごはんをたべないで待っているお母さんのことが胸いっぱいに思いだされたのです。どんどん黒い松の林の中を通ってそれからほの白い牧場の柵をまわってさっきの入口から暗い牛舎の前へまた来ました。
(「九、ジョバンニの切符 」より:丘から降りてくるジョバンニ)
「銀河鉄道の夜」より
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「盛岡市外鳥瞰図」(昭和3年)
これは、前章でも掲載した最終稿の丘の様子であるが、この鳥瞰図では、建物を主眼として描かれたもののようで、森林等の様子は詳細に描かれていない。
この絵図を見る限りでは、丸裸の山のようで、物語本文とは、かなりかけ離れている。
尚、鳥瞰図の右上部に描かれているところは、南部家墓所である。 |
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「新生盛岡市地図と案内」(昭和22年)
「盛岡市街及附近實測図」(明治43年)
これは地図であるため、森林等の様子は分からないものの、頂部分は平坦になっていることが伺える。 |
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「盛岡市街案内図」(大正9年)
ところが、これは、標高が曖昧なものの、丘に松が生えている様子と、その間にある小道が描かれている。
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大正9年に刊行された
「盛岡市街案内図」を除しいては、主たるものをメインにし、細かいところは割愛されているものの、存在しないものは描かれていない。
このことを念頭におきながら、上記4種を比較し、ここの頂は平坦な丘陵地であり、そこに至るまでは松などの樹木が生えていると解釈してかまわないであろう。
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