ジョバンニは、頂の天気輪の柱の下に来て、どかどかするからだを、つめたい草に投げました。
町の灯は、暗の中をまるで海の底のお宮のけしきのようにともり、子供らの歌う声や口笛、きれぎれの叫び声もかすかに聞えて来るのでした。風が遠くで鳴り、丘の草もしずかにそよぎ、ジョバンニの汗でぬれたシャツもつめたく冷されました。ジョバンニは町のはずれから遠く黒くひろがった野原を見わたしました。
そこから汽車の音が聞えてきました。その小さな列車の窓は一列小さく赤く見え、その中にはたくさんの旅人が、苹果を剥いたり、わらったり、いろいろな風にしていると考えますと、ジョバンニは、もう何とも云えずかなしくなって、また眼をそらに挙げました。
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ジョバンニは、頂の天気輪の柱の下に来て、どかどかするからだを、つめたい草に投げました。
町の灯は、暗の中をまるで海のそこのお宮のけしきのやうにともり、丘の草もしづかにそよぎ、ジョバンニの汗でぬれたシャツもつめたく冷されました。ジョバンニはじっと天の川を見ながら考へました。
(ぼくはもう、遠くへ行ってしまいひたい、みんなからはなれて、どこまでもどこまでも行ってしまひたい。それで、もしカムパネルラが、ぼくといっしょに来てくれたら、どんなにいいだらう。カムパネルラは決してぼくを怒ってゐないのだ。そしてぼくは、どんなに友だちがほしいだらう。ぼくはもう、カムパネルラが、ほんたうにぼくの友だちになって、決してうそをつかないなら、ぼくは命でもやってもいい。けれどもさう云はうと思っても、いまはぼくはそれを、カムパネルラに云へなくなってしまった。一緒に遊ぶひまだってないんだ。ぼくはもう、空の遠くの方へ、たった一人で飛んで行ってしまひたい。)
野原から汽車の音が聞こえました。その小さな列車の窓は一列小さく赤く見え、その中にはたくさんの旅人が、苹果を剥いたり、わらったり、いろいろな風にしてゐると考へますと、ジョバンニは、もう何とも云へずかなしくなって、また眼をそらに挙げました。
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