ページトップへのバック用アイコンTOP > 箱庭の賢治氏
第二話五十章 時計屋〜電気会社〜牛乳屋
ジョバンニの軌跡については、ジグゾーパズルに例えるなら、たった1ピースを残して、全て揃ったことになる。
ジョバンニが立ち寄って星座盤を眺めた「時計店」については、第二話十四章で触れたが、これがどちらであるのかが確定しかねるため、この前後の道すじが分からないのだ。


四、ケンタウル祭の夜

時計屋の店には明るくネオン燈がついて、一秒ごとに石でこさえたふくろうの赤い眼が、くるっくるっとうごいたり、いろいろな宝石が海のような色をした厚い硝子の盤に載って星のようにゆっくり循ったり、また向う側から、銅の人馬がゆっくりこっちへまわって来たりするのでした。そのまん中に円い黒い星座早見が青いアスパラガスの葉で飾ってありました。
ジョバンニはわれを忘れて、その星座の図に見入りました。

「銀河鉄道の夜」より



盛岡農林高等学校(現:岩手大学農学部)時代の賢治氏は、星座盤を手にして山野を歩き回っていたという。
そんな星座の観察を通して、「双子の星」の物語を家族に読み聞かしたのは、大正7年8月のことである。
つまり、賢治氏は、この歳以前に星座盤を手に入れていたということになり、ジョバンニが星座盤を眺める姿は、氏自身とオーバーラップする。
ここで、星座盤を眺めているのは、昔の賢治氏自身なのだ。

「宮時計店」が創業したのは大正中頃ということなので、ここで登場する時計店は、大正7年以前の明治7〜8年に創業した「玉置時計店」ということになる。
もしかして、賢治氏は、ここで星座盤を手に入れたのかもしれない。
ジョバンニが立ち寄った時計店を「玉置時計店」とすると、以下のような道すじが浮かび上がってくる。


時計店から電気会社まで時計店から電気会社まで


更に、「電気会社」の前を通過し、再び「中の橋」に戻ってきたとすれば、一番効率良く、並列した賑やかな通りを一周して通ったことになる。

「時計屋」〜「電気会社」の軌跡が浮かび上がってきたことにより、今までつなげることが出来なかった、ここから「牛乳屋」へと至る道筋も見えてきたのである。


電気会社から牛乳屋まで電気会社から牛乳屋まで


けれどもジョバンニは、いつかまた深く首を垂れて、そこらのにぎやかさとはまるでちがったことを考えながら、牛乳屋の方へ急ぐのでした。」と、物語には書かれていることから、賑やかな通りを一回りして「中の橋」へと戻ってきたジョバンニは、最短距離で「牛乳屋」へと向かったであろうという推測の元、示してみたのが、上記の軌跡である。

これで、ジグソーパズルの部品は、全てそろったことになる。


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