九、ジョバンニの切符
そしてしばらく木のある町を通って大通りへ出てまたしばらく行きますとみちは十文字になってその右手の方通りのはずれにさっきカムパネルラたちのあかりを流しに行った川へかかった大きな橋のやぐらが夜のそらにぼんやり立っていました。
ところがその十字になった町かどや店の前に女たちが七八人ぐらいずつ集って橋の方を見ながら何かひそひそ談しているのです。
(中略)
ジョバンニは橋の袂から飛ぶように下の広い河原へおりました。
その河原の水際に沿ってたくさんのあかりがせわしくのぼったり下ったりしていました。向う岸の暗いどてにも火が七つ八つうごいていました。そのまん中をもう烏瓜のあかりもない川が、わずかに音をたてて灰いろにしずかに流れていたのでした。
河原のいちばん下流の方へ洲のようになって出たところに人の集りがくっきりまっ黒に立っていました。
「銀河鉄道の夜」より
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これは、最終稿によるものである。
ジョバンニが橋へと至る道のりを整理してみると、
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大通りを出でしばらく進むと十字路に出る。
右手の通りのはずれに橋(大きな橋のやぐら)が見える。
夢中で橋の方へ走る。
橋の袂から飛ぶように広い河原へ降りる。
向う岸の暗い土手に火が見え、川原の一番下流には洲がある。
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そこで、これらの行動を、橋を中心として、地図と照らし合わせてみることにする。
尚、明治橋近辺については、街というよりは、御番所・船宿・御蔵などが立ち並ぶ藩政時代に栄えた城下町という趣が強いため、今回の考察からは除外してある。
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直進して右手に川が見えるということは、地図で言えば、上方(北)から下方(南)に進んでいることとなる。
つまり、丘を「天満宮」とするのならば、牛乳屋に立ち寄ったとはいえ、あまりにも遠回りし過ぎており、不自然なのである。
これについては、盛岡の古地図をみて愕然とし、一から考察し直すこととなるのである。
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