遥か彼方の遠い銀河を走っている軽便鉄道。
松本零士氏の描いた「銀河鉄道999」のイメージは、未だつきまとう。
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六.銀河ステーション |
「そうだ。おや、あの河原は月夜だろうか。」
そっちを見ますと、青白く光る銀河の岸に、銀いろの空のすすきが、もうまるでいちめん、風にさらさらさらさら、ゆられてうごいて、波を立てているのでした。
「月夜でないよ。銀河だから光るんだよ。」
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「銀河鉄道の夜」より |
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賢治氏が描いた「銀河鉄道の夜」は、北上川の川面に映し出された銀河によるものだと、ある程度の確証を抱いたものの、未だに、氏とは違うイメージを抱いてしまう。
宇宙空間は無限というイメージと、松本零士氏の描いた世界が重なり、賢治氏の軽便鉄道も、自由奔放に銀河のある宇宙空間を飛び回るというイメージだ。
宇宙船や飛行機などは、空間を意のままに動ける。また、車とかも、障害物が無い限りは然りである。
ここにも、思い込みがあったのだ。
これに対し、鉄道は、軌道がなければ走ることができない。
そして、軌道というのは、最初から決められたコースをたどる故、思い通りの方向へと、自由奔放には動かせない。
賢治氏の描いた銀河鉄道は、自由に空を飛んでいたのではない。
予め敷き詰められたレールの上を走る汽車なのである。
そして、レールの代わりに、軌道となったのが銀河なのである。
舞台は、銀河空間であるが、3D世界ではなく、地上と同じ2D世界での出来事なのだ。
それ故、車窓の景色として、何回も「すすき」が登場しているのである。
この発想は、もしかしたら、北上川の川面に映し出された一面の銀河の中をすべり行く小船から、あるいは、自身がこの川面の中を、小船で漂いながら眺めていたのかも知れない。
この一見自由奔放に感じる銀河鉄道も、実は、定めらた運命の中を走っているところに、妹トシ氏の横顔が見え隠れするのである。
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