そのとき俄かに向うから、黒い尖った弾丸が昇って、まっ先きの雁の胸を射ました。
雁は二三べん揺らぎました。見る見るからだに火が燃え出し、世にも悲しく叫びながら、落ちて参ったのでございます。
弾丸が又昇って次の雁の胸をつらぬきました。それでもどの雁も、遁げはいたしませんでした。
却って泣き叫びながらも、落ちて来る雁に随いました。
第三の弾丸が昇り、
第四の弾丸が又昇りました。
六発の弾丸が六疋の雁を傷つけまして、一ばんしまいの小さな一疋丈けが、傷つかずに残っていたのでございます。燃え叫ぶ六疋は、悶えながら空を沈み、しまいの一疋は泣いて随い、それでも雁の正しい列は、決して乱れはいたしません。
そのとき須利耶さまの愕ろきには、いつか雁がみな空を飛ぶ人の形に変って居りました。
赤い焔に包まれて、歎き叫んで手足をもだえ、落ちて参る五人、それからしまいに只一人、完いものは可愛らしい天の子供でございました。 「雁の童子」より |